
2025年5月16日
【コラム】空き家対策として注目「家族信託」とは?
総務省「住宅・土地統計調査」(2024年)によると、全国の空き家総件数は2018年の849万戸から2023年時点で900万戸と、51万戸の増加で過去最多という結果が公表されました。
親が認知症などを患い介護施設に入ったことで、実家が空き家になっているという方も多いのではないでしょうか?
症状の程度にもよりますが、空き家の所有者が認知症により意思能力を失ってしまった場合、所有者が行う法律行為(契約行為など)は無効となるため、空き家を売却すること(売買契約の締結)ができなくなってしまいます。
このような事態に備えて検討していただきたいのが「家族信託」です。
そこで今回は、実家が空き家になる原因や家族信託の内容、利用するメリットなどを解説します。
1.そもそも空き家の何が問題?
近年、ニュースなどの報道で「空き家問題」が取り上げられることが増えてきました。
ですが、そもそも「空き家」が増えるとどのような問題が生じるのでしょうか?
空き家が招く外部への問題
●家屋老朽化の進行が早まる。
●倒壊により第三者へ危害を及ぼした場合、損害賠償責任が生じる。
●草木の繁茂、害獣・害虫の発生、ゴミなどの不法投棄の温床になる。
●放火や不審者が住みつくなどの治安悪化の原因となる。
●治安や景観の悪化により周辺一帯の地価が下落する可能性がある。
空き家が招く制度上の不利益
●老朽化がすすむと、市町村からの指導の対象となり、解体命令や行政代執行(強制的な取り壊し)等を受ける可能性があり、
費用は当然所有者の負担となります。
●現在受けている固定資産税の減税措置が受けられなくなり、固定資産税が6倍になる恐れも…。
上記の通り、空き家は近隣に悪影響を及ぼすだけではなく、所有者への罰則もあるため「空き家」にしない為の対策が重要となります。
2.空き家になる主な理由
放置空き家が増え続ける理由は様々ですが、以下の理由が近年増えています。
空き家になる主な理由
①相続(家主の死亡)
●相続人がいない(行方不明)のため、そのまま放置されている。
●相続したものの、すでに居宅を所有している。
●意思能力が不十分(認知症、知的障がいなど)な相続人がおり、遺産分割協議ができないでいる。
●法定相続分のとおり、共有名義で相続して、その後の意見がまとまらず、不動産を活用できないでいる。
●相続登記を長年放棄したことにより、相続関係が複雑になってしまい手がつけられなくなっている。
②認知症
●家主が認知症になってしまい、売りたくても売れなくなってしまった。
●老人ホーム入居や長期入院により家を離れ、売却の必要が生じたときには認知症になっており手続きができない。
総務省の統計より、日本の総人口は(2024年9月15日推計)12379万人と2023年の統計時(12435万人)より59万人減少している一方で、
65歳以上の人口は3625万人と、前年(3623万人)に比べ2万人増加し、過去最高となりました。
また65歳以上の方を対象とした調査では、認知症と認知症の前段階と考えられている軽度認知症を合わせると3人に一人が認知機能にかかわる症状があると報告されています。
つまり、認知症は誰しもがなり得る可能性があるということが十分に考えられます。
このような社会背景から、財産管理の在り方について改めて協議することが求められています。
そこで、近年注目されているのが「家族信託」です。
3.「家族信託」とは?
家族信託とは、高齢者が認知症などで判断能力が低下しても、財産の管理や運用を子などの家族に安心して任せられる制度です。
通常、不動産の所有者が認知症などで判断能力が低下した場合、家族が勝手に売却したり、賃貸活用したりすることはできません。
そこで判断能力のある元気なうちに家族と信託契約を結ぶと、本人が認知症などで正常な判断ができなくなったときに、
家族が本人に代わって不動産を管理・処分することができるようになります。
では下記ケースを想定し、家族信託の内容について説明いたします。
ケース:母親は自宅でひとり暮らし、息子(長男)は離れて暮らしている。
認知症になった場合施設に入居したいと考えており、その際には自宅を売却して施設費用にあてたいと考えている。
家族信託による対策方法
母親と長男で次のような家族信託契約を結びます。
母親の自宅を長男に託して、長男が母親のために、託された自宅の管理・処分等をする。
上記のような契約を結ぶことで、母親が認知症になった場合でも母親に成年後見人をつけずに、
信託契約の内容に従って、長男が自宅を売却することができます。
自宅の売却代金は、信託契約の内容に従って、長男が母親のためにそのまま管理等を行うことが可能です。
4.「家族信託」のメリットは
家族信託のメリットはさまざまですが、最大のメリットとしては「財産の名義を変え、管理できる」点です。
そのため、財産の管理がしやすくなります。
例えば、上記の通り、母親が委託者となり自宅の管理や処分を受託者として長男に任せておけば、
万が一母親が認知症になっても、長男の判断で売却やリフォームなどが行うことができ、売却代金で親の施設への入居費用を捻出することも容易となります。
また財産の所有者が亡くなった際には、その事実を金融機関が把握すると口座が凍結されるため、葬儀や各種手続きに必要な費用を容易に引き出せず困るケースがあります。
しかし、家族信託では受託者の名義で財産を扱えるため、預貯金の引き出しや資産運用、処分などは委託者の生死に関わらず、一定の範囲内で自在に行えます。
その他、さまざまなメリットはありますが「もしも」の可能性を考え「家族信託」という選択肢を選ぶことは有効な空き家対策のひとつです。
5.まとめ
家族信託は、あらかじめ信託契約結ぶことで、本人が認知症などで判断能力が低下したときに、家族が代わりに財産を管理・処分することができる制度です。
この制度を活用することで、迅速な財産の処分や適切な管理、継承が可能になります。
ただし本人の判断能力が正常なうちに契約する必要があります。
家族信託は内容の取り決めや手続きにも専門知識が必要なため、必要に応じて金融機関や専門家などへ相談することをおすすめします。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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